砲丸投げで腰痛
Q 高校の砲丸投げの選手に腹筋と背筋で体幹を固めて上半身をばねの様にして 投げるように指導したところ、記録は伸びたのですが腰痛が出てきました。
砲丸投げの指導のポイントを教えてください。
A この質問には二つの内容があるので、分けて考えたいと思います。ひとつは「砲丸投げによる腰痛の原因(指導の良い点と問題点)とその対処方法」そしてもうひとつは「プライマリーモーション的砲丸投げのポイント」です。では、順を追ってお答え致します。
「砲丸投げの指導後の腰痛の原因とその対処方法」
まず、体幹を固めて上半身をバネのようにして投げるよう指導したとありますが、固めた上半身がバネになるためには、固めた体幹を腰の回旋や前後動のような動きで体幹部が動かされたときに起こります。この動きは、体幹の一部分が体幹部分以外の部分によって動かされた時に自然になるのもで、体幹自体が自力でバネになることはありません。(このことは、カラダの他の部分をバネにする際も共通です。)あるカタチを保持しようとしているものが他の動きによってねじ曲げられた時にバネの素が生まれ、ねじ曲げた力が何らかの方法(注1)で解放された時にバネとして働きます。この動きが正しく理解され、実行されていれば腰痛は生じなかったものと考えます。この場合の腰痛の原因は、おそらく元々「上体そらし」の要領で投てきしていた人が体幹を固定するように指示されたため、体幹部の前側の筋肉と後ろ側の筋肉の力のバランスが「上体そらし投げ」の時と同じ割合で増加したために腰部の緊張が非常に高くなったために起こったと考えられます。意識的に上体をそらす動作をしている場合、腰部にかかる負担ははかりしれません。無理に上体をそらす運動は、これから投げようとしている反対方向に力を加えるため、目的の方向には上手く力が伝わりません。
大切なのは、体幹部に動きの主体は無いと知り、適切な力で固定しているからだが、足による腰の回旋、または移動により動かされることで全身バネになって投てきする感覚を得ることです。動きを起こすのは地面に接している足が行い、その他の部分はその動きに促されて動かされる事で動き始め、徐々に末端に伝わりながら加速していく様子を想像して下さい。足によって移動または回旋させられた腰部は、固定された体幹部をねじ曲げ、その曲げられた体幹部が元に戻ろうとする時バネの作用が生まれ、投てきに役立ちます。
体幹部はボックス型(円柱)をしています。このカタチは積極的に動きを起こすのに適していると構造とは言えません。このカタチは動きを制限し、動きの土台となるのに優れています。この動きの土台がバネの性質を合わせ持つ事が出来たらハイパフォーマンスの素となることが出来ます。このことが高い運動能力を発揮するために、しっかり固定された体幹部が必要な理由です。また、しっかりした体幹はバランスを保ちやすいという利点があります。足が体幹部を支えることは、長いものを指先の上に立てて上手くバランスを取っているようなものです。もしその長いものがグニャグニャだったら到底バランスを保ち続けることは出来ません。足が上手くバランスを取ってコントロールしやすいための体幹部の固さは、力の伝達にも優れ、バネの性格も持ち合わせることが出来ます。なんと優れた構造でしょうか!
「足が動きを起こし、体幹部を伝わり、末端を加速させる。」このシンプルな構造を満たすための体幹部の固定を指導することで、腰痛を起こすようなトラブルは無くなるでしょう。(もちろんハードワークによる損傷は除外)
「プライマリーモーション的砲丸投げ」
「全身バネになる」を実践するための砲丸投げのポイントを挙げてみます。砲丸投げをするところを超スローモーションで再生した所を解説しているという設定で時間を追って説明します。(分かりやすいようにハンマー投げのような回転をしない投てきするものとします。)
滑り止めで真っ白になった利き腕の手(右と仮定)と同じく真っ白な右アゴの下が印象的な選手が投てきエリア(サークル)に入ってきます。砲丸を高らかにかざし、右足側に重心を移しながら低い体勢になり、投てき準備をします。腕は、約90°に曲げられた肘を、その形に固定しようとする弱い力(砲丸の重さを支えようとしている力よりも少し少ない力)を入れたまま、砲丸の重さにより曲げられてしまっています。そのように右アゴの下にセットされてしまった砲丸を、アゴの力でさらに肘を深く曲げるように固定され、腕の準備が完了します。(アゴをどけるとバネ仕掛けの古代の武器の様に砲丸は飛び出します。)
プライマリーモーションの「身長を変えないように膝を前に出す動き」の力を入れた右足を押し込ことでバネを生み、その伸びる力で前進する勢いを生み、目標の方向に「ケンッケンッ」と同じ足で進むとき、浮き上がったカラダを支える右足は、着地する際再度バネとなり反発力を生みます。
縮められた右足の反発力で、前方向に浮き上がりだしたからだ(軽くなっている)を「蹴る」動作でさらに加速しながら、その右足は同時に右腰を前に押し出します。この時着地した左足は右足によって進められたカラダを止める方向に力を加えることで、蹴る動作で加速された右腰は前に、止められた左腰は後ろに互いに反対の方向に腰を回す力を加えることで、固定されたカラダの最下部にねじる力を加えます。固定されたカラダは弾性によってネジリバネとなり、そのバネが解放されながら、最初に砲丸をセットした右腕(肩)の加速を始めます。バネによって動き出した右肩は目的の方向へと動き出し(軽くなっている)いよいよ砲丸の加速が強まります。最初にセットしたバネ化された右腕はまだアゴによって固定されたままで、今か今かと解放の時を待っています。
そして、ようやくそのときは訪れます。両足の動きにより生じたカラダのネジリバネの解放により送り出された右肩にセットされた砲丸はカタパルトを勢いよく飛び出していく飛行機のように加速されます。さらにそのとき同時に肩胛骨が内側にスライドさせられることでバネ化されていた右胸の筋肉のバネも解放され、勢いよく肩胛骨が外側前方に加速されることで、肩の先端も加速される事も加わり、最後にバレーボールのオーバーハンドパスの要領でバネになっていた手首が解放されることで加速のだめ押しが行われ、投てきが終わります。
バネ化されたものが解放される前に予備動作により砲丸に加速度を加えることが、実質的な目的方向への砲丸の重さを軽くして、最終的には、すでに前に進んでいる砲丸をより前に進める力を働かせることでさらに加速させるという発想が必要です。
つまり、砲丸を目的の方向に飛び出しやすくさせるために、あらかじめカラダ自体の移動などで、加速させる方向に対して行き足をつけさせることで移動の重さを軽くして、より速く動ける小さい部分の小さい力でも加速出来る素を作り出すところにポイントがあります。その加速にはバネの解放が使われているわけです。
全ての投てき競技に共通の発想ですので、確実にこの文章でスローモーションをイメージできるようにして下さい。この想像力が実際の動作(スローモーション)を見て動きを判断できるために必要です。
お分かりいただけましたでしょうか?
イメージ能力を養って下さい。
⊂shinzo⊃
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